原 健志さん
早稲田大学法学部2019年卒業
東京大学法科大学院既修者コース2年在学中
【受講歴】予備試験スタンダード論文答練(第1・2クール) 他
1 予備試験を志した理由
国際NGO・ヒューマンライツウォッチの土井香苗先生のように、NGOや国際機関で国際人権に関わる仕事がしたいと考え、弁護士を目指すことにしました。そして、法律学を深く学びたいというよりも、資格を取得して、早く仕事がしたいと思ったことから、予備試験を目指すことにしました。
2 辰已を受験機関として選択した理由
私は2018年の予備論文に不合格となりました。その最たる理由は、途中答案を連発したことにありました。それも、民法設問2が白紙、憲法も21条の私見がほぼ白紙と、ひどい有様でした。もっとも、順位は600番台で、途中にならなかった科目は一般教養を除くとAとBしかありませんでした。このことから、知識が不足しているというよりも、実践演習の不足にあったと敗因分析しました。そこで先輩合格者に相談すると、本番に近い形の演習をとにかく大量に詰めるからという理由で辰已を薦められました。このことがきっかけで、辰已を選びました。
3 試験対策
●短答対策
3月中旬くらいから、短答過去問を繰り返しました。過去問集は、辰已のパーフェクトが圧倒的におすすめです。解説のクオリティが極めて高いことに加えて、全問に正答率が付されているからです。短答は基本的な条文、判例を押さえておけば突破できるにもかかわらず、毎年捨て問(正答率が5割を切るような問題)が存在します。正答率が付されていれば、必ず押さえなければならない問題とそうでない問題の判断がつき、効率的に演習できます。何が捨て問であるかの見当がつくレベルに至っていない初学者の方には、パーフェクトを強く勧めます。
他の方と違う勉強法として、私は3月4月の段階は、過去問を解いて知らなかった知識をwordにまとめ、移動時間や入浴の時間等にそのまとめを何度も見返していました。よく言われることですが、10のあいまいな知識より、1の正確な知識です。この何度も確認した知識は、次第に正確な知識となり、本番で自信をもって正解できるようになりました。wordまとめは思いのほか時間がかかるのですが、1の正確な知識を作るためと思って頑張りました。
ここで、他の合格者は、パーフェクトを3回以上まわしたと言っている方が多いです。しかし、私は過去3年合格した年いずれも、2回まわすのが限界でした。また、直前まで勉強がまわらなかった家族法や手形法は、直前期にあいまいな知識を増やすより今までやってきたものの知識の精度を高めようと考え、思い切って全く過去問を解かずに本番を迎えました。それでも正確な知識を積み重ねていたことが功を奏し、無事合格できました。
また、辰已の短答完璧講座も受講しました。この講座のテキストは暗記に大変役立ちます。たとえば行政法では、処分性の有無に関する諸判例が〇×の形で表にまとめられているなど、「こんなまとめが欲しかった!」と思うような資料が手に入ります。私は、テキストの表や知識を本番当日の休み時間にも血眼になって読んでいました。
結果、今年は196点、201位と上位で合格することができました。
●論文対策
論文対策を最初に行ったのは、入門講座を終えた2016年半ばからで、最初は法律論文の難しさとあまりの範囲の膨大さに絶望しました。勉強方法も間違えていました。ろくに答案も書かず、演習書をじっくり読み進めるということをしたのです。古江刑訴など初学者向きではない本を、答案を仕上げることもできないうちから読んでいました。こうした演習書は、答案を書けるようになってから読むには勉強になるのでしょうが、この時の私には早すぎました。
優先順位を完全に間違えた結果、2017年の論文に惨敗。そこでこの年の秋から予備校の答練を受講し、論証の精緻化→暗記、そして答案作成という本来すべき勉強を行いました。しかしこの時は、論証を覚えて吐き出すのに必死で、問題文の読み方や途中答案回避のための技術はほとんど身に着けられませんでした。2018年の結果は上述の通りひどいものでした。
この年の不合格はさすがに落ち込みましたが、なんとか立ち直り、2018年のロー入試後から辰已の予備スタ論と金沢先生の過去問答練を受講しました。
予備スタ論は最高の演習教材です。まず、極めて本番に近い問題が出されます。今年の論文試験では、憲法でスタ論と酷似した問題が出題されたことで、スピーディーに答案構成を行えました。採点表が細かく、どの事情を拾ってどう評価すれば点がもらえるのか具体的に理解できるのも極めて効果的でした。また週2回2通ずつと、他の予備校と比較しても圧倒的にたくさんの演習を積むことができます。第2クールからは科目群ごとの演習になり早くから本番形式の演習に慣れることができますし、答練の前に必ず複数科目の復習をするため相当重い負荷をかけて勉強することになります。こうした勉強が本試験会場での自信につながります。
しかし、やはり最も大切な対策は過去問演習です。既に9年分の過去問がたまっており、過去問演習の優先順位は、他のあらゆる答練や演習書にも勝るはずです。過去問演習は、金沢先生の過去問答練が非常に有益でした。この講座ではA答案とC答案の差が浮き彫りになり、上位合格者の技術を盗むことができます。C答案が書けていた論点を落とした場合は不合格推定が働くことになるので、なぜそのようなエラーが起きたのかを分析することを心掛けました。
また、過去問答練とスタ論で出題された論点で拾えなかったものをストックしていき、次に出題されたときに完璧に書けるようにしました。
本番は、論点落としを大量にしてしまい、成績はギリギリでした。勝因は辰已でたくさんの事実を拾って評価するという訓練を大量に積んだからです。例えば行政法は、設問2の委任の限界という論点を完全に落としたので、設問2は0点です。しかしそれでもAだったのは、設問1の原告適格という誰でも書ける論点を、丁寧に事情をひろって厚く論じることができたからに違いありません。
基本的な問題にこそ合否の分かれ目があるのであり、基本的な問題にこそ本番に近い訓練をきちんと積んだかの差が出るのだろうと思います。
●口述対策
論文合格発表後から、口述再現を読み込み、要件事実の暗記、基本刑法の熟読等を行いました。模試は辰已を含め3つ受講したほか、合格者に手伝ってもらい、2日に1回は模試をやっていました。
要件事実は大島上巻がおすすめです。今年は初日民事で無断転貸借という、新問研や類型別に掲載されてない要件事実が出題され、大島本をつぶしていなかった人には相当酷な試験でした。請求原因レベルで詰まると、59のリスクが高まります。
刑事は、基本形法の読み込みが最も大事です。特に近時は学説の対立を非常に厳しく問うてくるので、各論の論点はすべて反対説まで含めて熟読しました。
私は辰已の口述模試に大きく助けられました。というのも、今年は2日目の刑事に同時傷害の特例と承継的共同正犯という、まさに辰已模試で新庄先生に厳しく練習していただいたテーマが出題されたのです。この辰已模試のおかげで、本番で厳しく学説の対立を聞かれてもなんとか堪えることができました。
口述は、本当に精神的にきつい試験ですが、95%は受かるのですから、精神的にきつくなるほど勉強した人は基本的には受かります。2週間あっという間で、やれることは非常に限られているので、勉強する内容を絞るということも肝要です。
4 これから予備試験を目指す方へのメッセージ
合格率4%の予備試験に受かっても翌年司法試験があり、さらに2回試験もあり…どんだけ先が長いんだ…と憂鬱な気持ちになっている方も多いと思います。私も全く同じでした。
ただ、これは予備に受かって気づいたことですが、予備に受かるメリットはウィンターに参加できることにとどまりません。自分の理想とする先生にメールや電話でアポをとって、個別に話を伺いに行くことも、「予備合格者だから」ということで許してもらえるようになりました。少しの勇気があれば、こうした自己開拓ができるようになるというは、とてつもなく大きなメリットです。体験記を書いている今は、ほぼ毎日、法律事務所のインターンや、個別にアポを取った先生に話を伺いに行って、その都度将来の自分を想像して楽しみになっています。鬱々としていた少し前とは世界が大きく変わったことを強く実感し、きつかったけど、頑張ってきてよかったと思える毎日です。
私がこのようなことを申し上げるのは恐縮ですが、拙稿をお読みくださった皆さまも、合格後の刺激的な世界を想像しながら、勉強を続けていただければと思います。
辰已法律研究所 受講歴
・予備試験スタンダード論文答練(第1・2クール)
・短答完璧講座(憲民刑編・商訴行政編)
・予備試験過去問答練
・予備試験論文予想答練
・予備試験論文公開模試
・予備試験口述模試