倒産法を、合格への切り札に!

R.Kさん 受験歴: 新試験1回
早稲田大学法学部
2020年予備試験合格
【受講歴】予備試験 スタンダード論文答練(第1・2クール) 短答完璧講座 他

1 倒産法を選択した理由

 最も大きな理由は、法学部在学時に、倒産法の講義を受講した経験があり、倒産手続の大まかな把握ができていたためです。ご存知の通り、コロナウイルスの影響で、令和2年予備試験から令和3年司法試験までわずか3ヶ月しかありませんでした。そのため、選択科目を迷う時間もなく、倒産法を選ぶ以外に選択肢がありませんでした(その点で、「選択」科目とは言っても、ほとんど選択の余地はありませんでした)。
 また、私は民事系科目が得意かつ好きでしたので、特に民法や民事手続法の知識を活かすことができる倒産法は、結果的には私にとって最適な科目であったと思います。

2 倒産法のメリット・デメリット

 デメリットは、全体像を把握するのに時間がかかることです。試験科目としての倒産法には、主に破産法と民事再生法が含まれますが、それぞれ200を超える条文があり、さらに似て非なる手続が多いため、他の科目に比して、学習に時間がかかるものと思われます。また、担保法の知識も少なからず要求されるため(例えば、譲渡担保など)、担保法が苦手な方にとっては、民事実体法の「苦手」が選択科目においても反映されてしまうという点で、リスクが大きいといえます。
 メリットとしては、上述したデメリットの裏返しになりますが、民法の学習とリンクさせることで、相乗効果が期待できる点です。民法の勉強をしていて「担保はよくわからないなぁ」と感じていても、倒産法の学習を通して、倒産という観点から担保を捉えたとき、それまでのモヤモヤした感覚から急に解放されることがあります。ほかにも、例えば民法の詐害行為取消権は、破産法における否認権に倣って改正がなされたという経緯があるため、一方の学習が他方の学習にも直結します。まさに一石二鳥です。このように考えると、倒産法は、それ自体が独立した科目というよりも、民法の延長線という認識の方が適切かもしれません。

3 予備試験合格後の学習状況

 予備試験論文式試験の受験が終わったころから、倒産法に限らず司法試験の過去問を解き始め、その中で倒産法の過去問も解いていました。そのため、予備試験合格後は、1回目に解いたとき特に間違えた箇所の確認を重点的に行いました。倒産法においては、第1問・第2問を問わず、過去に複数回出題されている論点や判例が多数あるため、その確認も行いました(今考えると、過去問を解きつつ出題論点表のような一覧を作成しておけば、頻出論点の絞り込みは容易であったかもしれません)。具体的な方法としては次のようにしていました。学部在学時に倒産法の講義を受講していたことはすでに書きましたが、その頃から倒産法の「まとめ」を作成しており、その「まとめ」に、過去問で間違えた箇所の出題趣旨や採点実感をコピーアンドペーストしていたため、その箇所の読み込みをし、必要に応じてその関連論点について、『ロースクール演習倒産法』の演習問題を用いて答案作成のトレーニングを行いました。繰り返しになりますが、予備試験合格から司法試験まではわずかな期間しかなかったため、これらの作業についても、全てに充分な時間を割いて満足のいく対策ができたわけではありませんでした。

4 受験対策として

(1) 成功した選択科目攻略法
 上述の通り、講義や過去問で得た知識を整理した「まとめ」を作成したことが、合格への一助になったように思われます。作成するためには多くの時間を費やしましたが、各論点や各判例の理解について、自分の言葉で説明できるようになるためには、この方法が最適であると感じます。
 判例の中には、事案が複雑なものが多々ありますが(複雑ゆえに、百選の【事実の概要】を読んでいるだけで眠くなってくる、という経験をされたことのある方もいるのではないでしょうか)、瀬戸=山本編『倒産判例インデックス』(商事法務、2014)の関係図を参考に、まとめに事実関係をまとめた図を作成することもありました。図を作成しているうちに、複雑に感じていた事案も、徐々に理解ができるようになり、遠回りのように思えて実はこの方法が近道だったのだと思います。

(2) 使用した基本書・参考書等
 破産法については、学部の講義で教科書として使用した加藤哲夫『破産法〈第6版〉』(弘文堂、2012)、民事再生法については松下淳一『民事再生法入門〈第2版〉』(有斐閣、2014)を基本書として活用しました。論証の下地としたのは、辰已法律研究所『一冊だけで倒産法』(辰已法律研究所、2015)、判例の事実関係を整理するために用いたのは瀬戸=山本編『倒産判例インデックス』(商事法務、2014)です。『一冊だけで倒産法』は、論点の理解の確認には最適で、通学のための電車内や隙間時間に、論点の結論と理由付けがスラスラ思い出せるかをテストしていました(ただし、単なる暗記では不十分であることは、後記5で改めて言及します)。
 演習は、司法試験過去問、田頭章一「演習」法教355号〜366号(田頭章一『講義破産法・民事再生法-重要論点の解説と演習』(有斐閣、2016)として書籍化されています)、加藤=中島編『ロースクール演習倒産法』(法学書院、2012)を用いました。特に、加藤=中島編『ロースクール演習倒産法』は、基礎知識(基礎というよりも「ど基礎」の方が適切かもしれません)の定着のためには最適な演習書です。近年の司法試験倒産法は、基礎的な論点・制度が問われる傾向にあります。「倒産法の基本的な理解」(令和2年司法試験倒産法出題趣旨より)の涵養のために、これをお読みの方々には、是非とも加藤=中島編『ロースクール演習倒産法』に取り組んでいただきたいと思います。

5 これから受験される方へ

 皆さんは、「倒産法」がどのような場面で活躍するのか、イメージできるでしょうか。私自身、初学者のころは、「会社が倒産したときの手続について定めている法律」という漠然としたイメージしかありませんでした。しかし、学習を進めていくうちに、会社が破産する場合もあれば個人が破産する場合もあり、ひとたび手続がはじまると破産者、破産管財人、破産債権者…といった多くの利害関係人が登場することに気がつきます。各登場人物は、それぞれ様々な目的を持って手続に参加してきますが、利害関係人全員が満足して笑顔で帰ることができるような結論はおよそあり得ません。そのため、利害が複雑に絡み合った壮大なストーリーがそこにあらわれてきます。
 しかし、基本書・体系書の文字列を眺めているだけでは、このような「リアル」なストーリーに出会うことができません。判例の事案や過去問の事案をよく分析し、各登場人物の視点から事案を捉えたときにはじめて、そのストーリーの複雑さや奥深さに触れることができます。そして、このようなストーリーを自らの頭の中で描くことができること、すなわち具体的な事案をイメージできるようになることこそが、倒産法の攻略に繋がると思います。例えば、否認権には詐害行為否認、偏頗行為否認、対抗要件否認など、さまざまな類型がありますが、それぞれどのような場面で行使されるものなのか、そのようなイメージが具体的事案を伴って想起できるようになれば、自ずと各類型の差異も見えてきますし、各類型が要求する要件の意義が理解できるはずです。
 具体的な事案を思い描きながら学習することが攻略に繋がる、と申し上げましたが、それを端的に実現しているのが、case1・case2…と短文の事例を設け、それに対する解説をしつつ各制度の説明を試みる基本書・参考書だと思います(倒産法ではないですが、例えば、大塚ほか『基本刑法2—各論[第2版]』(日本評論社、2018)、磯村保『事例でおさえる民法 改正債権法』(有斐閣、2021)など。)。残念ながら、倒産法に関する基本書として、そのような形式をとるものは見当たりません。しかし、判例の事案や演習書・過去問の事案に触れることで、十分に代用できるはずです。単に、論点と論証を暗記したり、判例の結論を暗記したりするのではなく、どのような場面で問題となる論点なのか、判例の事案における争点はどこか(当事者の主張のどこに対立があるのか、その対立はなぜ生じたか)、という点に十分留意して事案に向き合っていただけると、倒産法の得点も自ずと伸びるのではないでしょうか。
 本稿でここまで紹介してきたことは、あくまでも私が考える倒産法の攻略法であり、絶対的なものではありません。試験まで、限られた時間の中で膨大な量の勉強をしなくてはならず、忙しいとは思いますが、様々な勉強法・学習法を試行錯誤して、納得のいく方法を探していただきたいと思います。そして、倒産法学習で接する一つひとつの事案(ストーリー)を味わいながら、倒産法を合格への「切り札」にしていただけたらと思います。

辰已法律研究所 受講歴

【2021年対策】
・短答完璧講座(憲法)

【2020年対策】
・予備試験 スタンダード論文答練(第1・2クール)
・予備試験 過去問答練(第1・2クール)
・短答完璧講座(民法、商法、行政法)

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