受けきることの大切さと難しさ

原 健志さん 受験歴: 新試験1回
早稲田大学法学部
東京大学法科大学院(既習)2019年入学・2021年中退
予備試験2019年合格
【受講歴】司法試験全国公開模試 他

1 司法試験の受験を決意した経緯

 国際NGO・ヒューマンライツウォッチの土井香苗先生のように、NGOや国際機関で国際人権に関わる仕事がしたいと考え、弁護士を目指すことにしました。そして、資格を取得して早く仕事がしたいと思ったことから、予備試験ルートで司法試験合格を目指すことにしました。

2 予備試験合格までの学習状況(法律学習)

 2015年に法学部に入学し、予備校の入門講義を受講し始めました。この時は、2016年の予備試験短答合格、2017年の予備試験最終合格、2018年の司法試験合格を目標としていました。
 しかし、大学入学当初はサークル等で学生生活を謳歌して、2016年の予備短答はほとんど対策をせず受験した結果、手も足も出ず惨敗しました。その後、予備校で論文対策の講義を受けたり演習書を読み始めましたが、受験生モードにまだ切り替わっていませんでした。
 2017年になり、今年は短答には受かろうと、短答の過去問集を解き始めました。1周目は解説の意味もよく分からないし、いつまでたっても終わらないし、苦痛そのものでした。このころから、司法試験をめざす友人ができて、図書館に22時まで(時には終電まで)残って勉強する日々が始まりました。
 晴れて2017年の予備短答に合格しましたが、短答後に燃え尽きてしまい、今年の論文突破は無理だろうというあきらめから論文対策に本気になれませんでした。このときもっと勉強しておけば2018年の予備に合格できたかもしれないと本気で後悔しています。結果、本番でほとんどまともな答案が書けず、秋にはFがたくさんついた成績表が返ってきました。ここで、せめて大学在学中に予備に受かりたいと尻に火が付き、10月頃から他の予備校の答練に通って論文答案をたくさん書きました。
 しかし、答練では途中答案を連発していました。2018年の予備論文でも、設問1つ白紙になるレベルの途中答案を2通作成してしまい、696位で不合格になりました。大学在学中に何も結果を残せなかったことに対する絶望感で心底落ち込みましたが、かろうじて東大ローには合格しました。
 翌2019年、476位とぎりぎりで予備論文を突破し、無事最終合格を果たしました。

3 予備試験合格後の学習状況(法律学習)

 11月に最終合格を果たした後、事務所のインターンや個別訪問等をしました。年内で労働法のインプットが終わっておらず、過去問も1年分しか解けていない状況でした。年が明けて、過去問演習を行いつつ、短答も解き進め、労働法もゼロから演習をし、改正民法もインプットして…と非常に忙しくなりました。5月までに対策が間に合うか、落ちたらどうしようと不安でいっぱいでした。特に司法試験の過去問は難問ばかりで、予備の時に改善できた途中答案癖も再発し、対策に非常に頭を悩ませました。
 全国模試が近づいてきた3月からはコロナ感染が拡大し、図書館や自習室も閉鎖、リフレッシュに欠かせなかったジムも閉鎖されていきました。それまで、図書館で友人とこもって勉強して、食事の時はおしゃべりを楽しみ、週に最低1回はジムで体を動かすというリズムで生活していたのですが、その日常生活ができなくなったのです。一人暮らしをしていたこともあり、人と話さない、ジムにも行けないという中での受験勉強により精神的に追い詰められ、朝起きることも難しくなり、うつ病になりかけました。
 こうした中で辰已全国公開模試を受けたのですが(模試初日が終わって帰宅したら、オリンピック延期の報道に接しました)、全国8位の好成績を納めることができ、ここでやっと自信がつきました。模試の結果が返ってくる少し前に司法試験の延期が発表され、対策が間に合っておらずかなり焦っていたため非常に安堵したことを覚えています。
 8月までは、消化していなかった司法試験の過去問、辰已の答練、短答過去問パーフェクトを繰り返す、などの勉強をしていました。延期のおかげで、完璧とまでは言えないものの、ある程度満足のいく対策ができました。

4 辰已講座の利用方法とその成果

① 本試験過去問答練
 司法試験対策として最も重要なのは本試験過去問です。出題形式が変更された2011年以降のものに限ってもすでに10年分の過去問の蓄積があります。2020年の憲法の問題が2014年の過去問と酷似しているように、焼き直して出題されることもままあるため、過去問をつぶすことが何よりも優先されるべきことです。
 過去問で問われている問題意識は極めて高度であり、受験生としては何をどこまで書けばいいのか迷うことがあります。本試験まで時間のある受験生は自主ゼミなどで議論を深められるかもしれませんが、予備合格後に初めて司法試験過去問に取り掛かる方など、本試験まで時間のない方は応用論点を深めることに時間をかけられません。その点、辰已専任講師・弁護士である本多諭先生のコンパクトな講義は、落としてはいけないところとそうでないところを明快に指摘され、未知の論点が出題された際の表現方法も具体的に指摘してくださったので、非常に参考になりました。

② 選択科目集中答練
 選択科目は初日の最初の科目であり、その出来はその後のメンタルに大きく影響を及ぼします。そのため選択科目に自信を持つことは極めて重要であるところ、自信は、「大量に答案を書いた」「未知の問題に対しても自分の頭で考えて答案を書くことを怠らなかった」というプロセスを経て初めて身につけられます。しかし、他の予備校は選択科目の答練の機会が2回程度しかなく、自信をつけるに十分とは言えません。この点、選択科目集中答練は全8回と圧倒的な演習の機会あります。私はこの答練で未知の論点が出題されるたびに論証集にストックしていき、網羅的な学習を心がけました。この答練のおかげで、模試で労働法A判定を得られ、労働法に自信をもって本番に臨むことができました。

③ スタンダード論文答練(スタ論)福田クラス1C・2C
 5月までは過去問の演習で精いっぱいでしたが、6月からスタ論を時間内に解くという勉強を継続的に行い、腕がなまらないようにしました。出題形式の変更があった憲法、刑法、刑訴や大改正があった民法はスタ論で形式等に慣れつつ、出題可能性の高い論点を確認し、論証集にストックしていきました。辰已専任講師・弁護士である福田俊彦先生が「必須」と指摘された論点を書けなかった場合には、論証集にふせんを貼り重点的に復習をしました。

④ 全国模試
 司法試験は、受けきるだけで本当に大変であり、5日間を本試験の会場でシミュレーションする経験は必須です。模試の結果が返ってくるのは本試験の約1か月前と本番まであまり時間がないため、順位をみて一喜一憂するのではなく、模試を受験する前に自分の課題を設定し、それを達成できたかをチェックするべきと考えます。私は途中答案が最大の課題であったため、途中答案ゼロを課題に設定し、途中答案を作らないことだけを意識しました。前述の通りこの模試で好成績を収めたことで自信がつき、以後の学習で論点が書けなくても「自分が書けないならまわりも書けないだろう」と思えるようになりました。このメンタルを持てるかは極めて重要であり、本番に自信を持って臨むためにも、模試で少しでもいい順位を取れるようピーキングすべきです。

⑤ 直前フォロー答練
 6月以降スタ論と並行して受講しました。福田先生が厳選した予想答練であり、最も本番に近い答練でした。ここで出題された論点は、試験本番の休み時間の最終チェックで確認しました。

5 受験対策として私がやって成功した方法

① 短答対策
 私は過去問を解いて知らなかった知識をwordにまとめ、移動時間や入浴の時間等にまとめを何度も見返していました。10のあいまいな知識より、1の正確な知識です。何度も確認した知識は、次第に正確な知識となり、本番で自信をもって正解できるようになりました。まとめの作成は思いのほか時間がかかるのですが、1の正確な知識を作るためと思って頑張りました。
 また、試験範囲が膨大な予備試験では、直前まで勉強がまわらなかった家族法や手形法は、直前期にあいまいな知識を増やすより今までやってきたものの知識の精度を高めようと考え、思い切って全く過去問を解かずに本番を迎えました。それでも正確な知識を積み重ねていたことが功を奏し、201位と上位で合格できました。

② 論文対策
 私は予備でも司法でも、半分近くの問題で途中答案をやってしまっていました。途中答案即不合格というわけではないですし、司法試験で途中答案を複数作ってしまっても合格した人がいるのですが、なにより途中答案はメンタルに響きます。
 対策としては、何分経ったら(構成が不十分であっても)書き始めるかというデッドラインを決める、自分が1頁書くのに何分かかるのか見極めるということがあげられます。
 私は問題文を読むのも書くのも遅く、答練で計ってみると1頁15分かかることもままありました。5頁は書ききるとすると、答案を書くのに75分必要であり、途中で間違いに気づくとか、6ページ目に突入しても大丈夫なように5分を加えると、80分。したがって私の場合は40分経ったら強制的に書き始めないとほぼ必ず途中答案になることに気づき、以後この40分ルールだけは死守しました(苦手な民事系は40分で構成を終えるのが難しく、最後まで苦心したのですが…)。
 荒技として、どうしても間に合わないと思ったらIRAC(問題提起→規範→あてはめ→結論)を崩し、問いにだけはまず答えて、時間の許す限りで規範などを書くということも実践しました。「AのBに対する請求は認められるか」という問題なら、「AのBに対する請求は認められる。なぜなら、〇〇条は××と解されるところ、本件では~~であるからである。以上」のような具合です。辰已答練の配点表からもわかる通り、結論の明示には配点があります。司法試験はより高い点を獲得した者が受かるものですから、どんなに追い込まれても結論だけは書くということを意識してみてください。

6 受験対策として使用した本

① 短答パーフェクト(辰已)
 解説の質が高いことに加えて、全問に正答率が付されているため、必ず押さえなければならない問題とそうでない問題の判断がつき、効率的に演習できました。

② ぶんせき本(辰已)
 超上位合格者の答案表現や思考過程を盗み論証集などに書き込み、かつ、ぎりぎりで受かった人の答案と自分の答案を比べてぎりぎりだった人が拾えている論点を書けているかを確認するという使い方をしました。途中答案に悩んでいる方は、合格答案の中でもっとも分量が少ない答案を熟読し、どうしたらコンパクトに書けるかを研究するのがおすすめです。私はこれをした結果、問題提起がコンパクトになりました。

③ 各科目
憲法…辰已『合格思考憲法』、大島義則『憲法ガール』『憲法ガールⅡ』
行政法…土田伸也『実践演習行政法』、大島義則『行政法ガール』
民法…千葉恵美子ほか『Law Practice 民法Ⅱ債権編』
商法…田中亘『会社法』、伊藤靖ほか『事例で考える会社法』
民訴…勅使川原和彦『読解民事訴訟法』、越山和広『ロジカル演習民事訴訟法』
刑法…大塚裕史ほか『基本刑法ⅠⅡ』、井田良ほか『刑法事例演習教材』
刑訴…古江頼隆『事例演習刑事訴訟法』
労働…辰已『1冊だけで労働法』、水町勇一郎『労働法』、水町勇一郎ほか『事例演習労働法』

7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス

① 学部在学生・予備試験受験生へのアドバイス
 ひとたび、予備試験を目指すと決めたら、わき目もふらず必死になって学部在学中の予備試験合格を目指していただきたいです。合格まで時間がかかればかかるほど精神的にも経済的にも辛くなります。私は学部4年の予備論文に不合格になった時の絶望感と後悔を忘れられません。二兎追うものは一兎も得ずと言います。二兎追って二兎得られるごく一部の天才を除き、予備試験合格をめざしつつ別の何かも達成することは不可能に近いです。楽しそうなキャンパスライフを送っている人を見てとにかく隣の芝が青く見えがちですが、ひとつ大きなものを得るために、捨てる勇気を持っていただければと思います。何かを捨ててもなお、合格する価値ある試験だと思います。心から応援しています。

② 予備試験合格の司法試験受験生へのアドバイス
 予備合格から司法試験までは本当にあっという間です。この間に法律事務所のインターンもあり、選択科目のインプットもして、司法試験の過去問も演習して…となると、相当タイトなスケジュールになり、私は年明けから「なんでもっと早く司法試験の過去問を解かなかったんだ、選択科目のインプットを終わらせなかったんだ」と後悔しっぱなしでした。
 浮かれた気分を引き締め直し、再び試験モードに入るのは大変なことです。司法試験は油断しなければ大丈夫だと思いますので、慢心せず、早め対策を始めて下さい。

③ 本番の心構え
 本番の心構えとして最も大切なのは、最後まで受けきることです。繰り返しになりますが、5日間受けきること自体、本当に大変な試験で、受け終わった時はもう2度と受けたくないと心から思いました。
 本番では思いもよらないハプニングが起き得ます。私は自信をもって臨んだ労働法で第1問から論点が浮かばず、頭が真っ白になりました。その問題は1.4頁しか書けていません。2.6頁白紙の答案用紙が回収されるときの絶望感たるや、すさまじいものでした。また、全国模試で1位を取った行政法ができなさすぎて(後で友達が皆できなかったと言っていたので相対的に問題なかったのですが)、4.2頁しか書けませんでした。初日終わった段階で絶望して夕食は全くのどを通らず、2日目の朝食も全部戻してしまいました。8月の酷暑の中の司法試験でしたが、2日目の会場に着いた時はエネルギー不足のためか震えるほど寒かったのを覚えています。いつ気を失ってもおかしくないな、と考えていた状態で試験開始の合図を聞きました。模試で経験しなかったピンチでした。民法、商法も4頁と少ししか書けないというひどい有様でしたが、それでも、ここで帰ったらすべてが終わってしまうと思って、最後の気力で民訴まで受けきりました。中日でメンタルを何とか整え、刑事、短答を受けきった時には、合否以前に無事受けきれただけで良かったと思いました。
 予見不可能な事態が本番では起きることを頭の片隅に置かれたうえで、実際にそのようなことが起きても、受けきることだけは頑張っていただきたいです。

辰已法律研究所 受講歴

【司法試験対策】
・司法試験全国公開模試
・スタンダード論文答練 福田クラス(第1・2クール)
・本試験過去問答練
・選択科目集中答練
・直前フォロー答練(辰已専任講師・弁護士 福田俊彦先生)

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