「相対評価の試験」の対策として

氷見 哲洋さん 受験歴: 新試験1回
東京大学法科大学院(既習)2019年入学
予備試験2019年合格
【受講歴】司法試験全国公開模試 他

1 司法試験の受験を決意した経緯

 法学部に進学した当初は、進路についてあまり考えていませんでしたが、学部の授業がとても楽しかったので、法律に深く関わる仕事をしたいと思うようになりました。予備試験に挑戦しようと決めたのは学部3年の秋頃でした。

2 予備試験合格までの学習状況

(1) 学部4年次の予備試験
 知識のインプットは大学の講義でひととおり済んでいたので、まずは短答合格を目指して、ひたすら肢別の問題集に取り組みました。論文試験の対策は短答に合格してから始めたので全く間に合わず、論文試験では途中答案を何通も提出し、不合格となりました。

(2) LS入学まで
 学部4年の夏から翌年春まで、辰已の予備試験スタンダード論文答練で、論文問題への取り組み方の基礎を学びました(後述4(1))。この答練では週に6本のペースで答案を書いていました(全部はこなせない週もかなりありましたが)。また、秋にはLS入試のための自主ゼミにも出ていました。
 LS入学後には答案を書く時間が取れないだろうと考えて、また短答にはすでに一度合格していたということもあって、入学まではほぼ論文対策のみに集中していました。

(3) LS入学から論文試験まで
 大学院の授業との両立のため、予備試験対策は最低限の内容に絞りました。
 短答対策としては、辰已の肢別アプリ(後述6(2))をスキマ時間に解くだけでは十分な量をこなせなかったので、試験直前期に辰已の予備スタンダート短答オープンの問題1クール分を解きました。模試は辰已の予備試験総択を受けました。
 論文対策としては、短答が終わってから、週に2本程度答案を書いていました。模試は辰已の予備試験論文公開模試を受けました。

(4) 論文試験を終えてから口述試験まで
 論文試験の結果を待っている間は、『新問題研究 要件事実』や大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎〔上巻:最新版では入門編〕』で要件事実の勉強をしました。
 論文の合格発表後は、口述まで約2週間しかないので、過去問のロールプレイをたくさんこなすことを第一に考えました。他の論文合格者と集まって、本番と同様に口頭で答える練習をしました。模試は辰已の予備試験口述模試を含めて3つ受けました。それ以外の時間は、民事は要件事実を中心に、刑事は刑法(総論・各論)を中心に、具体的事案への当てはめとその説明ができるレベルまで知識を定着させるように努めました。

3 予備試験合格後の学習状況

(1) 延期決定まで
 口述合格から1月にかけては租税法などのインプットが中心で、答案はほとんど書きませんでした。このことを春になって大いに後悔しました。
 アウトプットに本格的に着手したのは2月からでした。論文の過去問については、スタンダード本試験過去問答練の教材と採点実感と出題趣旨を使って、最近の問題から順に遡っていきました(後述5)。選択科目については自主ゼミに参加していました。短答対策としては肢別アプリを使いつつ(後述6(2))、辰已の司法試験総択も受けました。4月の初めには辰已の司法試験全国公開模試を受けました。

(2) 延期決定後
 4月上旬に司法試験の延期が発表されました。
論文対策としては、この時点でまだまだ未検討の過去問が残っていた(これは延期がなければかなり大変な状況でした)ので、引き続き過去問を遡りつつ、辰已の直前フォロー答練(後述4(2))や、それに続くConditioning答練を受講しました。4月から6月にかけては週に4~5本の答案を書いていましたが、模試で腕をいためたため7月からはペースを落としました。結局、過去問を遡るのは平成24年度までで止め、そこからは直近2~3年の問題の2周目を解いたり、1周目で歯が立たなかった問題を解き直したりしていました。
 延期で時間ができたので、基礎を固めるために重要論点のインプットの見直しも行いました。辰已の『趣旨・規範ハンドブック』と基本書を使って、重要論点の総ざらいをしました(後述6(1))。

4 辰已講座の利用

(1) 予備試験対策
・予備試験スタンダード論文答練(第1・第2クール)
 問題文の読み方と答案の書き方をこの講座で身につけることができました。この講座では、設問にひととおり答える答案を時間内に確実に書き上げるにはどうすればよいか、という観点から、①問題文のどこをヒントにどんなことを書けばよいのか、②どの論点は確実に押さえるべきでどの論点は書けなくても問題ないのか、といった実践的な内容を学ぶことができました。満点を目指さなくて良い、誘導に乗ってひととおり問いに答えれば合格できる、という意識をここで持てたことによって、その後の学習でも細部に深入りしすぎずに済んだように思います。
 論文対策で最優先なのは、他の受験生も解いている過去問を解くことだと思いますが、この講座ではスタ論の問題(オリジナル問題)に加えて数年分の過去問も解くことができたので、その点もありがたかったです。

・予備試験スタンダード短答オープン(第1クール)

・予備試験総択
 短答試験も意外と時間が足りなくなるので、スタ短や模試で慣れておくことが有効でした。また、論文対策との時間配分を調整するためにも、この時点での短答の実力を見極める良い機会でした。

・予備試験論文公開模試
 本番と同じ時間割で解くことで、体の疲労や集中力の低下の度合いがわかり、当日に向けた課題を発見できました。また、初見の難しい問題をどうにか書ききらねばならないという状況には本番でも確実に出くわします。そうした状況への対処方法を直前期に確認しておく貴重な機会となりました。

・予備試験口述模試
 口述本番はとにかく緊張するので、模試を受けておくことをお勧めします。受けるタイミングについては、論文合格発表から口述試験まで約2週間しかないので、準備が不十分な段階でも早めに模試を受けてフィードバックをもらい、その後の調整を充実させることをお勧めします。

(2) 司法試験対策
・スタンダード本試験過去問答練(辰已専任講師・弁護士 本多諭先生)
 司法試験の過去問については出題趣旨と採点実感という公式の資料が最重要だと思いますが、それらを答案に反映させるにはどうすればよいのかを考えるにあたって、解説や模範答案が参考になりました。

・司法試験総択
 予備試験と違って直前期に短答のみに専念するわけにはいかず、むしろ論文対策中心になっている中で、短答足切りの危険がないかどうかをチェックし、弱点を発見できました。特に民法については改正法に対応した演習をする貴重な機会でもありました。

・司法試験全国公開模試
 司法試験では予備試験以上に、本番と同じ時間割で解く経験をしておくことが重要だと思います。体の疲労や集中力の低下を体感することで、各試験日の夜や2日目の翌日の休みをどう過ごすべきかの方針を立てることができました。また、本番では必ず、聞いたこともない論点を問われてどうにか一応の解答を与えねばならないという場面に出くわしますが、そのリハーサルにもなりました。

・直前フォロー答練(辰已専任講師・弁護士 福田俊彦先生)
 直前期の勉強の道しるべとなりました。福田先生曰く、直前期は不安に駆られてあれもこれもと手を広げたくなるが、そこを我慢して基本を固めるべきだ、とのことです。先生はこの点を繰り返し強調されていて、扱う問題(過去の答練で扱われたオリジナル問題です)や解説の内容も、そうした観点に立ったものでした。私の場合、延期によってにわかに生じた時間に何をすればよいのか迷っていたのですが、この講座を受けて、とにかく基礎を固めることに専念するという方針を立てました。

・Conditioning答練(辰已専任講師・弁護士 西口竜司先生・福田先生)
 5~6月に受講しました。過去問や過去の答練のオリジナル問題から選ばれた問題を解いて、重要な知識を改めて確認することができました。解説も、どこまで書ければ十分なのかを明確にした内容だったので、直前期につい細部に深入りしてしまうのを防ぐことができました。

5 司法試験の論文試験の対策について

 司法試験の過去問については、充実した出題趣旨と採点実感が公開されているので、それらが大いに参考になります。ただ、それらに書かれた試験委員の要求を全て満たそうとしてしまうと、やる気を挫かれます。相対評価の試験だと割り切って、意識的に妥協しました。具体的には、初見の問題の場合、採点実感にいう「一応の水準」には確実に入りたいが、「良好な水準」に入れれば十分、といった具合です。
 答案を書くときの時間配分は、答案構成30分+書く時間90分を目安にしました。答案構成の際には、(配点が明示されていればそれを参考にして)各設問で書く答案の分量を合計5ページになるように割り振りました。それを一応の目安にしながら答案を書いて、「この問題はそろそろ終わらせないと時間が足りなくなるな」「次の問題を少し短縮しよう」などと判断していました。本番で書いた答案の文字数は各科目2600~3000字程度(選択科目を除く)でした。

6 使用した教材(上に述べた辰已講座は除く)

(1) 『趣旨・規範ハンドブック』・基本書
・『趣旨・規範ハンドブック』(辰已)
 知識の確認のためのコンパクトな教材として、予備試験の論文・口述対策で重宝しました。重要な論点に★印が付いているので、メリハリをつけた学習ができます。ただ、各論点の詳しい解説や文脈はないので、これによって暗記がうまくいくかは人によりそうです。

・基本書
 延期で時間ができたので、基礎のインプットを確実にすべく、『趣旨・規範ハンドブック』で重要とされている論点に的を絞って、基本書で改めて確認をしました。この作業で各論点の理解が深まり、知識が定着したように思います。このとき、答案で使いたい規範や理由づけにマーカーを引いたので、それ以後は基本書を論証集として使いました。このような使い方に適していた基本書として:安西文雄ほか『憲法学読本』、中原茂樹『基本行政法』、田中亘『会社法』、山口厚『刑法』(ただし総論部分は△)、宇藤崇ほか『刑事訴訟法』(リーガルクエスト)、佐藤英明『スタンダード所得税法』。

(2) 肢別アプリ
 予備試験・司法試験を通じて辰已の肢別アプリを使いました。移動中にも片手で勉強できるのでとても便利です。
 ただし、収録されている選択肢の全てを解く必要はないと思います。試験本番では、憲法や刑法の一部などを除けば、全部の選択肢の正誤が分からなくても解ける(他の選択肢が分かればよい)問題が多いので、肢別アプリに取り組むにあたっても、重要マークのついた選択肢・新試験の過去問で実際に問われた選択肢に的を絞って、これらに確実に正解できるように練習しました。

7 これから受験する方へのアドバイス

(1) 学部在学生・予備試験受験生の方
 私は大学の授業で知識をインプットしたのですが、その科目の全体像がつかめないまま授業を受けていたので、知識があまり身につかなかった気がしています。授業の序盤のうちに、薄い入門書で科目の全体像をざっと掴んでおくことを強くお勧めします。
 また、知識を定着させる最良の方法はおそらく答案を書くことなので、なるべく早い時期に答案を書き始めることをおすすめします。

(2) 予備試験合格の司法試験受験生の方
 司法試験の論文試験の過去問を解き始めたころ、時間内に書き終えることが全くできず戸惑いました。とにかく解答時間が足りないので、書けば点が入るであろう要素であっても短く切り上げたり捨てたりすることが必要になります。予備試験に比べて、答案を書くことが精神的につらいですし疲れるのですが、相対評価の試験だと割り切って、自分に多くを求めすぎずに続けていくことが肝心だと思います。

辰已法律研究所 受講歴

【司法試験対策】
・司法試験全国公開模試
・司法試験総択
・スタンダード本試験過去問答練(辰已専任講師・弁護士 本多諭先生)
・直前フォロー答練(辰已専任講師・弁護士 福田俊彦先生)
・Conditioning答練(辰已専任講師・弁護士 西口竜司先生・福田先生)

【予備試験対策】
・予備試験論文公開模試
・予備試験総択
・予備試験スタンダード論文答練(第1・第2クール)
・予備試験スタンダード短答オープン(第1クール)
・予備試験口述模試

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