「自分と向き合うことの重要性」と「試験と向き合うことの重要性」

毛利 優樹さん 受験歴: 新試験5回
法政大学法学部 法律学科
明治大学法科大学院 【既修】2014年入学・2016年修了
【受講歴】司法試験全国公開模試 他

1 司法試験合格までの道のり

(1) 学部
 私は法政大学の法学部に進学し、「せっかく法学部に進学したのだから司法試験を目指してみたい」と思うようになりました。そして、周囲が就職活動を始め出す2012年の大学3年生の時に他の予備校で入門講座を受講することを決めました。他校の予備校の入門講座を一回しして、憲法、民法、刑法及び商法については最低限の論文式試験には対応できるようになり、翌2013年、明治大学法科大学院の既修者コースに合格しました。

(2) LS生活
 2014年4月、明治大学法科大学院既修者コースに進学しました。1年目は特に課題に追われ、日々の講義の単位をとるための勉強はできていても長期的な展望を持った勉強はできていなかったと思います。1年目ではいわゆる演習書にはほとんど手を出す余力はなく、司法試験の過去問も目を通した問題が数問あるだけで1問もフルで書いたことはなかったです。
 2015年4月、なんとか留年せず進級することができました。しかし、私の1年目のクラスの仲の良かった友人たちの中には留年してしまう人も居ました。2年目は1年目よりも時間があり、留年した人も交えて、互いに教え合って勉強する必要があるのではないかということでと5人で自主ゼミを始め、週に1回程度、司法試験の過去問や評判の演習書の問題を検討することにしました。自主ゼミのメンバーは仲が良かったですが、補助講師の先生を交えず、また、闇雲に抽象的な議論に深入りしないことなどのルールを定めなかったことが災いし、仲は良くても、あまり効率の良いゼミではなかったと思います。また、ほぼ全員が刑事系科目を好きあるいは得意と考えているのに対し、行政法に明確に苦手意識を持っていました。そういった点で補い合えるメンバーではなかったと今は思います。

(3) LS修了後
 2016年にLSをなんとか留年することなく修了できましたが、短答式試験に2問差で不合格となりました。短答式試験は憲法・刑法はそれまでの模試で35点前後、民法は45点前後で、本番は各科目いずれもそれより数点低かったと記憶していました。「模試は本番より難しい」といった自分にとって都合の良い言葉に甘えてしまっていたと思います。
 その後、2017年の2回目の試験に向けてLSで修了生向けに行われていた週2回の司法試験過去問起案に参加し、自主ゼミに加えてLS主催のゼミにも参加するなどしてがむしゃらに勉強していきました。2回目の試験では短答には合格できましたが、論文式で不合格となりました。この頃は、司法試験の合格を目指す気持ちを半ば諦めつつあり公務員試験にも挑んでいましたが、いつも面接試験で不合格となっていました。司法試験に未練があるのに迷っていて「とりあえず公務員に…」という気持ちになっていたのを面接官にも見透かされていたと思います。

(4) 3回目、4回目の受験
 そんな中途半端な気持ちで挑んだ2018年の3回目の司法試験にも論文で不合格となりました。この時、既に疎遠になっていた自主ゼミメンバーの合格の報告を受けました。その人は前述した留年した友人でした。率直に友人の合格を祝いたい気持ちもありましたが、とても悔しくなりました。そして、この結果はこれまで自分と真摯に向き合ってこなかったことによるものであり、自分自身と正面から向き合うべきだとようやく悟りました。
 同時期、既にLSの友人たちとは疎遠になっていたため、Twitterを通じて司法試験に関わる方々と交流するようになりました。この繋がりにより自分と同じ複数回受験生に限らず、法曹の先生や修習生、現役のLS生や学部生、予備試験受験生の方など本当に多くの方々から様々な刺激を受けることができ、ここから自分の受験生活は大きな転機を迎えたと思います。
 2019年の4回目に向けては、短答の問題を毎日解き、奇数日に過去問を、偶数日に定評ある演習書の問題を解いていきました。演習書の問題を解いた理由は、皆がやっている問題から出題された時に他の受験生と差が出てしまうことを避けるためでした。過去問学習の際は特に①正解筋の把握は当然として、②絶対に正確に書けなくてはならない論点とそうでない論点の違いは何か、③途中答案をなくすといったことに気を付けていました。特に③の途中答案ですが、最後の設問については「とりあえず埋めるだけ埋めた」といった言葉を合格者からも不合格者からもそれまでよく聞いていました。しかし、そういった言葉に甘えて最後が尻すぼみの答案を書くことが多かったのでこれを絶対になくすことにしました。この具体的な方法については後述します。

(5) 最後の受験
 2019年の4回目の司法試験でも論文で不合格となりました。この時は本番で途中答案もなく手応えがあったのでかなりショックを受けました。そして成績通知を見てさらに愕然としました。必須科目の成績は憲法がAで行政法がF、選択科目が30点台前半でその他の科目が全てBで約10点差での不合格でした。あとわずかに運があれば合格できていたという思いも頭をかすめました。しかし、運に合否を左右されるレベルを脱することはできなかったのだと思い至りました。そんな中、先に合格していた先輩から受講していたという辰已専任講師・弁護士である福田俊彦先生が担当されるスタンダード論文答練(スタ論)のクラスの話を聞きました。そこでは「すべらない答案」を書くことを重視しているとお話を聞き、Fや選択科目30点台など沈む答案を書いてしまっていた自分の弱点対策として適していると感じました。またすべらなかった科目ではAをとれるほどの答案を書く地力が必要と思いました。そこで、「すべらない答案」の書き方を体得し、答案の地力を底上げするため2020年スタ論福田クラスを受講することにしました。
 また、LSと疎遠とはなっていましたが、やはり衆人下で時間を計って過去問の問題を解く練習は常にするべきと考えたので、再び修了生向けの週2回の過去問起案に参加しました。
 2020年4月、全国模試も終わり、本番まで約1ヶ月前となったところで新型コロナウイルス感染拡大を受け司法試験の延期が発表されました。丁度、私生活でもショックなことが重なり、4月下旬はほとんど勉強に手がつかなかったです。しかし、どういったことが起きようとも自分がするべき勉強は何も変わらないです。5月から体勢を立て直し、6月末までは短答の問題を毎日解き、それまでフルで書く機会がなかった過去問を奇数日に書き、偶数日は演習書やスタ論で扱った問題の復習に充てるという4年目の形式で日々を過ごしていました。そして、7月に辰已のNEW全国公開模試を自宅で受け最終調整し、8月12日からの最後の試験に挑みました。
 最後の司法試験を受けても合格した確信は持てませんでした。2021年の1月20日、自宅で自分の受験番号があるのを見た時は「やっと終わったんだ…」という安堵感を強く感じました。

2 受験対策

(1) スタ論福田クラス
 スタ論福田クラスでは「すべらない答案」を書くことを至上命題としていました。私は、できないくせに完璧さにこだわる面があり、この「すべらない答案」を書くためには、どのように試験時間中ふるまうべきかを最後の年に探求しました。特に配点の高い設問を先に解くために書きだしの頁を変え、最後に空白部分に×をつける方法(例、設問2から書きだすために3頁目から書き始め、設問1との間の空白となった2頁目に×を付け「3頁目1行目へ」などの文を付す)は非常に有益でした。私は本番の民法でこの方法を用いることができたおかげで、失敗したもののCで滑り止まったと思っています。
 また、福田先生が配布される総論レジュメには福田先生の方法論を余すことなく記載されており、私は常に座右に起きながら講義を受講し、先生の話された具体的な内容と抽象的な方法論をチェックしながら聞いておりました。これにより、福田先生の「すべらない答案」を書くための手法を体得できたと感じております。
 最後にこの点は福田クラスに限らず、スタ論全般に言えることですが、スタ論の受講後、配点表の自己採点をすることも非常に有益だったと感じております。これにより、ともすれば採点がブラックボックスになりがちな問題のどの部分に点数が振られているかを常に意識することができ、本番でも非常に有効だったと思います。

(2) 私の勉強法
 最後の受験の際、私がやっていたのは「自分の成果の開示」でした。自分の書いた答案を全世界に公開できるほどの度胸はなかったので、Twitterで特に仲の良かった方々とだけ相互フォローした非公開アカウントに、最後の年の9月以降、自分が書いた有料の答練・模試を除いた全ての答案及び答練等の成績をアップロードし、それに自分でコメントをリプライで付けていきました。これにより、衆人環視に晒され、甘えやサボるといったことができなくなり、また、他の受験生の方々との切磋琢磨の場にもなりました。10か月で150通ほどアップロードしたと思います。

(3) 私が使用した本
 以下は4回目の受験以降に使った本です。
 「憲法学読本」、「読み解く合格思考・憲法及び同民法」、「基本行政法」、「事例研究行政法」、「民法(全)」、「ロープラクティス民法及び同商法」、「リーガルクエスト会社法及び同刑事訴訟法」、「事例演習教材会社法及び同刑法」、「民事訴訟法概論」、「解析民事訴訟法」、「基本刑法Ⅰ総論」、「刑法各論(西田)」、「事例演習刑事訴訟法(古江)」、「国際関係法私法入門」
 判例集は、公法系以外は百選でした。憲法は「憲法判例(戸松・初宿)」、行政法は「ケースブック行政法(弘文堂)」でした。公法系は、百選では省略も多く、なるべく全文を読む必要性が特に高いと感じたからです。
 また、辰已の「短答過去問パーフェクト」と「ぶんせき本」は特に重用していました。
 短答過去問パーフェクトは毎日開き、短答の演習を行いました。もっとも、正解率の高い問題や上位層・下位層で正解率に特に差がある問題・選択肢に着目する勉強法など自分はできませんでしたがより工夫の余地はあったと思います。
 ぶんせき本により、過去問について、現場で書かれた答案を把握し、何が評価の差を分けたのかを学ぶことができました。もっとも、現在受験者数が急速に減っています。そのせいで順位ランクと答案の出来が数年前とは一致しないこともあるかと思いますので過去の年度のものを読む際は注意を要すると思います。

3 これから受験する人へ

 LSにおられる方は今から実際に手を動かして答案を書くことを大切にし、長期的な展望を持って一発で合格する気持ちで日々勉強をされてください。
 ①及び②はそれに加えリベンジ受験される方にもお伝えしたいことです。

① 自分と向き合うことの重要性
 私が合格に5回かかった理由がこれだと思います。自分自身と向き合い続けなければ合格のために何をすべきかがわからなくなってしまうと思います。例えば「過去問を起案すべき」といったアドバイスを受けてただ書いて論点を把握したとしてもそれは作業です。過去問の起案を通じて、自分が合格のためにそこからさらにどのような勉強をしなければならないのか、書いている時の自分はどうしてそのような表現をしたのかなどを吟味する必要があります。
 また、一般的に有用なアドバイスが本当に自分にあてはまるかを吟味することも必要です。
 私は「途中答案をなくすためにコンパクトな答案を…」とアドバイスされましたが、私の途中答案の原因は、論証が不正確なくせに妙に完璧主義な性格のせいで、現場で固まってしまうことにありました。そんな私の途中答案解消の決定打は、できる限りインプットを強化し、論証を忘れた場合の規範の立て方などの対応策も事前に決めておくことでした。

② 試験と向き合うことの重要性
 まず、現場では問いに真正面から向き合ってください。
 そして、日々の勉強の中で司法試験をむやみに難しいと考えたり、簡単だと考えたりしないようにしてください。自分にとって何が合格に必要かが歪むおそれがあります。
 長い受験生活ですが日々淡々と自分のやるべきことに向き合い続けてください。

辰已法律研究所 受講歴

・スタンダード論文答練 福田クラス
・司法試験全国公開模試

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