何よりも重要なのは「法的三段論法」を真の意味で習得することである。

M.Oさん 受験歴: 新試験3回
上智大学法学部法律学科
慶應義塾大学法科大学院【未修】、2015年入学、2018年卒業
【受講歴】スタンダード論文答練福田クラス 司法試験全国公開模試 他

1 司法試験の受験を決意した経緯、合格までの道のり

 お恥ずかしい話ですが、私は最初は「親の勧め」というだけで法科大学院進学および司法試験受験を決意しました。その後、法科大学院のエクスターンプログラム等の中で弁護士資格に本格的に興味が湧き、遅れながらも「弁護士資格を持ち、様々な働き方や業務内容を選べる生き方をしたい」という動機で、この道を目指し続けました。
 もっとも司法試験は、モチベーションと努力量があれば合格できるというものでは全くなく、在学中から壁にぶつかったり、努力の方向性を間違えてしまったりという要因で、私は3回目の受験での合格となりました。1回目は2400位台という芳しくない順位で、2回目は1700位台という惜しい順位でしたが、いずれも正しい勉強方法・答案への表現方法を知らなかったことが敗因であると思います。それらを発見し、改善したことで、3回目には300位台の順位で合格することができました。詳細は5に記します。

2 法科大学院受験前の学習状況(法律学習)

 法学部法律学科卒業ですので、学部の授業において一定度の法律知識はありました。もっとも、この道を目指すと決めたのが学部3年の春と遅かったことから、本格的な法科大学院試験勉強というものは間に合わず、結局、未修者コースへの入学となりました。

3 法科大学院入学後の学習状況(法律学習)

 法科大学院時代には良くも悪くも、基本書・授業で扱われている論点をくまなく潰す(=インプットする)という学習を反復していました。これは基礎知識の穴が無くなるという意味で悪くはなく、また定期試験対策としてはそれで良かったかと思いますが、司法試験勉強としては、アウトプット量が圧倒的に不足しており、間違った方向性であったと思います。その結果が1回目の、2400位台という順位です。なおこのとき、憲法・行政法・民法はそれでもA評価だったのですが、刑事系など他科目にはEやFがついてしまっていましたので、やはり「書き方」が問われる科目においてはアウトプットの不足は致命傷になると思います。

4 受験対策として辰已講座の利用方法とその成果

 全国模試、スタンダード論文答練(スタ論)福田クラス、スタ論福田クラス直前フォロー答練、そして2020年度の受験時にはコンディショニング論文答練を受講しました。
全体として、辰已の答練および全国模試は採点表に細かく点数が割り振られ、例えば問題提起に1点、規範に4点、当てはめに6点(その詳細な内容も配点表に明示があります)、結論に1点などと決まっていて、他の大手予備校と比較して採点者の裁量が小さいです。これは、いわゆる採点者との相性によって点数が大きく変動しないのはもちろん、事後の見直しによって自己の答案を改善する道筋が明確になるという意味で学習上非常に有効です。
 私は他の予備校の答練を受講したこともありますが、正直なところ、採点者の裁量が大きいことで「どこが駄目だったのか分からない」「結局は採点者との相性ではないか」「司法試験本番ではもっとちゃんと読んでもらえるはず、この答練の結果は気にしすぎても仕方ない」…等といった状態となってしまい、効果があったとは言えませんでした。他方、辰已の答練は上記のように詳細な採点表があり、事後の見直しに非常に適しています。普段の学習はもちろん、直前期においても、自己の答案で「ここの書き方をこう変えればあと何点もらえる」等として少しでも点数の期待値を高め、すなわち合格可能性を高めることができます。辰已の講座の利用方法の真髄はまさにそこにあると言っても過言でないように思います。受験直前には、それまで受講したスタ論の答案をタブレット等でスキャンし(紙媒体では多すぎるため)、「ここであと何点取れる」というポイントを書き込んでおいて、それを何度も見直しておくのが有効で、おすすめできます。
 また、辰已専任講師・弁護士である福田俊彦先生が担当する福田クラスは特に、司法試験本番における「振る舞い方」を徹底的に教示してくれて、これも合格を揺るがないものにするために大いに役立ちます。難問に遭遇したときに多くの受験生がやってしまいがちな思考・論述のパターン、すなわち「難問ほど時間と思考力を割いてしまう」「基礎論を疎かにして応用論点に完璧に応えようと勝負に行ってしまう」などの行為を的確に批判し、それとは異なりどのような思考内容・時間配分で答案を書けば良いのかという行為規範を明示してくれますので、本番に対するイメージトレーニング、そして安全に合格するビジョンというものが見えるようになります。
さらに、2020年度においては新型コロナウイルスによる司法試験延期という、異例の事態が生じましたが、これに対していち早く手を打ってくださったのが辰已でした。司法試験本番まで空いてしまった3ヶ月において、答案を書く力を落とさない、定期的なアウトプットによって維持する、という趣旨で開講されたのが「コンディショニング論文答練」です。これは福田・西口(辰已専任講師・弁護士 西口竜司先生)両先生といういわゆる辰已の看板講師両名が、しかも破格の安さで3ヶ月の間に7回の答練を行ってくださったという、受験生にとって地獄に仏ともいうべき状況でした。こうした、その年ごとの受験生の状況に寄り添ったサービスをしてくださることも、辰已の大きな魅力であると思います。
 なお司法試験延期に際しては、それまで本試験に向けて張り詰めていた緊張の糸がどうしても緩んでしまうのを感じました。これは私ばかりではなく、5月の実施を前提に真面目に追い込みをかけていた人の多くがそうであると思います。実施時期も発表されない中で、これから何をどの程度やって良いのか迷いがありましたが、そうした際にも辰已では、福田・西口両先生の対談動画によって、司法試験延期に応戦するための行動指針を示してくださいましたので、それに従って勉強計画を練り直し、着実に実行していきました。今回の件に限らず、こうして、勉強の方針に迷ってしまったときには講師の方々の助言を探し、それに素直に従うというのが間違いない方法であると思います。

5 受験対策として「私がやって成功した方法」「私のノート作成術」「私のスケジュール管理方法」等

 まず、司法試験において求められている能力は何よりも「法的三段論法」であると思います。それも、単に形式的に「規範定立・当てはめ・結論」という構成にするのみではなく、規範定立段階においては「条文を見て・趣旨を解釈して・趣旨に基づいて規範を導く」ということが、真に求められている法律家の思考である。加えて、当てはめ段階においても「事実」を抽出するのみならず適切な「評価」を与えることが必須である。そしてこれらの思考内容を適切に答案に反映することが、合格答案の要件であると思います。
 これを踏まえ、特に「規範」については、単に基本書や論証集の記載を「覚える」のではなく、条文の文言から「導ける」状態を目指しました。条文のうち一定の文言を見ることで、それをトリガーとして「趣旨」がこうであったと想起でき、そこから「規範」を思い出せるという状態です。これは、やっている事は一見同じようでも、暗記ではなく思考回路の整備であるという意味で、脳の負担が格段に減ります。それに留まらず、このような思考こそ司法試験の問題において求められている内容ですので、いわゆる「応用問題」や「未知の問題」にもそれぞれ、こうした思考で対応できるようになります。この方法であれば究極には、条文の文言だけあればどんな問題にも対応できますので、司法試験会場に持っていくのは「司法試験六法」1冊のみで良いということになります。このような状態が理想であると、辰已の福田先生もおっしゃっていましたし、私も切にそう思います。
 また、「当てはめ」についてはとにかく過去問演習によって「相場観」を蓄積することが肝心であると思います。合格者の方々も大半は、天性のセンスで良い当てはめを行っているわけではなく、むしろ過去問の出題趣旨・採点実感等で「このような事実にはこのような評価が妥当である・あり得る」等といった記載があるのを読み、それを蓄積していくことで、安定して妥当な評価ができるようになっているのだと思います。そして、そのためには過去問演習ごとに、そうした「相場」として使えそうだと思ったものをノートに記しておき、それを適宜見返すことでパターン認識を蓄積してゆくのが良いと思います。
 さらにスケジュール管理については、まず「司法試験本番までに達成したいタスク」を一覧に記し、「それ以外はやらない」と決めます。そこから、そのタスクを分割していき、1週間程度ごとにノルマを設定します。それに向けて、一日一日の勉強内容・勉強量を決め、それをこなしたら記録しておきました。1日の勉強時間は7時間程度と決め、それが終わったらまずは自分を甘やかす時間にして、余力があるときにだけ追加で勉強していました。真面目な方ほど「とにかく頑張ろう」「気合いで1日何時間でも勉強しよう」等とがむしゃらにやってしまいがちですが、圧倒的に量が多い司法試験勉強においては、そうした内容では破綻を来してしまいますので、むしろタスクの範囲を絞って分割しておくのが必須であると思います。

6 受験対策として私が使用した本

 基本書として特におすすめできるのは『基本行政法』、久保田安彦先生らの『会社法』(いわゆる赤白本)です。これらは分かりやすい解説でありながら内容は非常に良質で、司法試験本番において「どう書くか」ということを想定しながら読むのに馴染みます。
 また、内容的に分かりやすく、心から納得できるという点では『基礎からわかる民事訴訟法』(和田吉弘先生)、『リーガルクエスト刑事訴訟法』もおすすめできます。
以下は辰已刊行書籍について記載します。
 趣旨規範ハンドブックはやはり、論証集として優秀であり、また概ね「条文文言→趣旨→規範」という流れでまとめてくれていますので、上記5のような思考回路でのインプットをするのに有用でした。ただ、注意すべき点としては、同書記載の長さのままですと本番では時間を取りすぎてしまうことが多いです。そのため、各問題における当該論点の重要性に合わせて、論証を自在に「伸び縮み」させられるように用意しておくことが必要であると思います。
 ハイローヤーは、受験直前における論点予想としてやはり重宝しました。的中率も高いです。もちろん、あくまで「ヤマ当て」に過ぎませんので、その予想論点ばかりをやって他を疎かにしてしまうことは禁物です。しかし、多くの受験生が購読し、同書に載っている論点は固めてくるはずですので、相対評価である司法試験において他の受験生に差をつけられないように、同書を読んでおくことは受験前には必要であると思います。
 肢別本については、分野別に過去問をまとめてくれているという意味では有用です。ただ、全ての肢を潰そうとしてしまうのは非効率ですので、まずは★が付いている箇所を回すようにして、2周目以降においてその他の肢もやっていく、★無しの肢については完璧を求めない(=1問や2問、納得できない肢があったとしても深追いせずに先に行く)という利用法が良いと思います。短答のみならず司法試験勉強全般に言えることですが、このように「比例原則に従って」勉強内容を選択することは常に重要で、肢別本で「全てを潰そうと頑張ってしまう」というのは陥りがちな1つの失敗パターンであると思います。

7 自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス

1 LS在学生へのアドバイス(在学中にやっておくべきことなど)
 とにかく上記5の「法的三段論法」を習得することが何よりも肝心であり、個人的にはそれこそが合格と不合格とを分けている最大の分水嶺であるとも思います。そのためにはまず、LSの授業は踏まえた上で過去問などの起案演習によって「法的三段論法」のトレーニングを行い、「条文文言→趣旨→規範」という思考回路、および「当てはめにおける相場観」というものを徹底して身につけておくことが何よりの近道となるはずです。そして、それを踏まえた上で辰已の答練(できれば福田クラス)に臨み、自身の答案が辰已の「採点表」において良い評価を受けられるのか、もし受けられていないとすればそれはどの点をどう改善すれば良いのか、ということを考え、分からなければ必ず質問する、ということを繰り返してゆくのが、合格に向けた最短ルートとなると思います。LS在学中から、これらのトレーニングで充実した期間にすることで、他の受験生に大きく差をつけることができるはずです。
 なお、司法試験は「頭の良い人」ではなく、「素直な人」が受かる試験であると言われます。自分の頭でうんうんと考えることも大事ですが、それ以上に、辰已の講師の方々が「こういう勉強をしてください」と示した内容を素直にこなし、そのトレーニングを積み重ねていくことが合格への近道となるはずです。
2 リベンジ合格を目指している方へのアドバイス
 残念ながら今回、不合格の結果であったという方は、必ず「どこが駄目だった」という敗因分析を行い、その点を変えたと言える状態で次回の司法試験当日を迎えることが必要であると思います。敗因は、試験当日の答案の内容のみならず、日頃の勉強方法についても見つかるかと思います。私の場合はそれがまさに、上記5の「法的三段論法」でした。単なる「規範定立・当てはめ・結論」という形式のみならず、「条文・趣旨から」規範を導く、「相場観を踏まえて」当てはめ(事実の評価)を行う、ということが習得できておらず、それが2回目の不合格の原因となっていました。その点を変えたことで、1700位台という2回目の順位から、300位台という高順位にまで上げることができたと思います。
 このように、辛い気持ちを堪えて「敗因分析」を行い、その「敗因」を超えることが、リベンジ合格の要件だと思いますので、是非それを頑張っていただきたいと思います。

辰已法律研究所 受講歴

・スタンダード論文答練福田クラス
・スタンダード論文答練福田クラス直前フォロー答練
・コンディショニング論文答練
・司法試験全国公開模試

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